ディーセント・ワーク

三度の飯より映画が好き。三度の飯を食える人権が好き。

マイノリティのサマーキャンプ 「アダムス・ファミリー2」

 記憶にある限り、私が生まれて初めて映画館で観た実写映画は「アダムス・ファミリー」だ。初体験がこの作品だなんて、恵まれていたとつくづく思う。
アダムス・ファミリー」はゴシックな衣装/美術と鋭いブラックユーモア満載のホラーコメディ家族映画で、観客からも評論家からも高い評価を受け、2年後の1993年に続編となる「アダムス・ファミリー2」が公開された。

"おばけ一家"のアダムス家に新たな子が生まれ、それに反発(っていうか殺そうと)する姉ウェンズデーと兄パグスリーに手を焼いた両親は、ベビーシッター兼ナニーとして美女デビーを雇うことに。しかし、デビーは資産家と結婚しては遺産目当てに殺害を繰り返している連続殺人犯で…というお話。
残念ながら興行的には前作の4/1近くまで落ち込み、また主演の1人であるラウル・ジュリアが翌年に亡くなったため、以降続編は制作されていない。

けど、私は「アダムス・ファミリー2」は1作目と同じかそれ以上にすぐれた作品だと思っている。特に出色なのはなんといってもサマーキャンプの描写だ。
(以下、映画のメインストーリーにはほぼ触れていないけど、サマーキャンプのシーンはネタバレ全開の文章となります。)

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常に陰気な顔で暗い服を身にまとい、酒をあおり煙草をたしなみ、暇さえあれば拷問のこととか考えているウェンズデーとパクズリー。しかし二人は、デビーの陰謀によって健全さの象徴「サマーキャンプ」に送り込まれてしまう。
いつも前向き!笑顔!みんなと仲良く!を強制される苦痛の中で、二人は次第に心のバランスを失っていく。

中でも笑えるのは、指導員が問題児であるウェンズデーとオタク少年を小屋に閉じ込め、みんなと仲直りするためと称して「ディズニー映画を見せ続ける」拷問をする場面。
ビデオの再生が始まるや否や、青ざめて顔をしかめる二人。
少年「どうしよう、ディズニーだ‥‥」
ウェンズデー「大丈夫、大したことないよ」
少年「で、でも‥‥。‥‥バンビだよ!」
オープニング曲が流れ、二人の顔は恐怖にひきつる…!

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私もディズニー映画に象徴されるような「健全さ」がすごく嫌いな子どもだったから、このシーンは今も鮮明に覚えている。
ちなみに、「アラジン」で初の非白人ディズニープリンセスが誕生したのは「アダムス・ファミリー2」公開の前年なので、米国では白人至上主義的との批判が高まっていた時期なのかも知れない。それでも黒人プリンセスが誕生するのは更に10年以上も後のことだ。


そしてこのサマーキャンプは、何とも痛快なマイノリティたちの反撃によって幕を閉じる。

キャンプ最終日。保護者達にキャンプの成果を見せるため、感謝祭を題材にした演劇を披露することが決まっている。
ところがキャスティングは極めて差別的なもの。明るく従順な子たちは入植者の白人に、反抗的/陰気/障害者などの"問題児"は先住民にと、くっきり分かれた配役をされてしまう。
台詞もまた酷くて、入植者の少女が「あの人たちがどんなに野蛮でヘンテコでも、許してあげましょうね。だって彼らは優れた文化を知らない未開人だもの。」とニコニコで言ったりする。
劇が始まり、先住民の代表役にキャスティングされたウェンズデーは最初こそ従っているものの、さあみんなでテーブルを囲みましょうとなった瞬間、反撃を始める。
「待って。ご馳走になるわけにはいかない。あなた方は私たちから土地を奪った。何年か先、私たちはトレーラーハウスでの暮らしを強いられるだろう。我々が痛みと困窮に耐えているとき、あなた方は贅沢を謳歌しているだろう。我々の神は告げた。入植者たちを信用するなと。私はあなた方の皮をはぎ、村を焼き払うことに決めた。」

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本当はもっと長くて辛辣な台詞なのだけど、とにかくこう宣言して"問題児"たちの逆襲が始まる。舞台を焼き、電動車イスでいじめっ子を縛り上げ、親たちを椅子から転落させ、指導員を火あぶりにし、キャンプ場は大混乱!
このシーンも、今となっては白人に先住民の声を代弁させることの是非とかいろいろ問題視される気はする。けど、「感謝祭なんて先住民からすれば虐殺の始まりでしかない」という未だに議論されている問題を、家族向けメジャー作品で25年前に描いたことには驚きしかない。


アダムス・ファミリー」は1作目も2作目も、誇り高きマイノリティであるアダムス一家が、彼らを異端視する"健全な社会"の差別と立ち向かう物語である。ラウル・ジュリアが存命でさえあれば、細々とでも続編を出してほしかったなぁ‥‥と思わなくはない。

次回は、私が「これってアダムスファミリーに対するディズニーの回答じゃない?」と思った映画「ズートピア」について書ければと思う。