ディーセント・ワーク

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女たちの自由と未来! 「オーシャンズ8」ネタバレあり

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私は30代半ばまでイケスカナイ映画好きだったので、こういうザ・娯楽作は興味を持てなくて、これが初オーシャンズシリーズです。ごめんちょ。
というわけで前作までの経緯とか全く知らない状態で観ましたが、十分に楽しめる内容でした。知ってたらもっと楽しめたんだろうとは思うけど、ここまで女たちのサイコーな世界を見せられちゃうと、男だらけの前作を後追いで観る気にはならないのが正直なところ。

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個性豊かな女たちががんばって高価な宝石を盗む本作。重要なのはストーリーよりも、その「個性豊かな女たち」が、本当に個性豊かで、それぞれに多様で、とびきり魅力的で、やり取りを見てるだでフォー!!!!!!ってテンションMAXにしてくれること。
主人公デビーはメンバー選びについて「女は無視されてる(から目立たず犯行できる)」と語る。注意深く見てみると、本作に出てくる美術館の警備員、街の警察官、カルティエの鑑定士とガード。つまり"重要なものを守る役"は、もれなく全員、男が配役されている。
これは現実のアメリカ社会を考えると不自然なバランスだと思う。つまり意図的に男社会をカリカチュアライズして見せている。
信頼に値しないものとして「無視されている」女たちが、とてつもなく輝き、まんまと世間を騙して見せる様子は胸をスカッとさせてくれる。


(ここからネタバレ)

 


キャラクター描写とディティール以外で感心したのは終盤の展開。
まず、それまでバカセレブとして描写されてちょっとかわいそうだったダフネ(アン・ハサウェイ)が8人目のオーシャンズとして加わる点。
優秀でカッコイイ女たちが主役の物語において、「甘やかされたビッチ」というのはシスターフッドからさえ敵として描かれる傾向があり、この展開が来るまではそういう流れかなぁ‥‥ただ利用してるだけで嫌だな…と感じただけに、最高にゴキゲンな展開だった。
ちなみに、女性を描く映画で、ある種のステレオタイプ化された女性が悪役になってしまう問題についてはこの記事が詳しい。

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ダフネの種明かしが終わると、今度は老女たちが登場し、実に楽しみながら世間を騙して大金をせしめる。たぶん彼女たちにも少なくない分け前を手にしただろう。
このように、作戦に直接かかわっていない女性たちにも視線が向けられているのが大変気持ちよいと感じた。

なんやかや終わってエンドロールの後日談。そこで描かれるオーシャンズそれぞれの金の使い方は、すなわち「女たちが叶え得る未来」だ。このひとつひとつが全くステレオタイプ的ではなく、これまた多様で、自営業からユーチューバーまでそれぞれをバカにせず、幸福な未来として描いている。
この辺で私は号泣してしまった。その多種多様な女のライフビジョン自体もそうなんだけど、デビーが犯行直前に言う「この世のすべての、犯罪を夢見る8才の少女たちのためにやりましょう」という言葉が思い起こされたからだ。
すべてを成し遂げたデビーは、何に散在するでもなく、兄のお墓を前に「出来ることを見せたかった」と静かに言う。
これは勿論、物語的には亡くした兄へ向けた言葉だけど、私には世界中の「8歳の女の子」たちに向けているように思えた。
女は無視されてる。バカにされてる。でも、何だってできるんだよ、と。それを子どもたちに見せた映画なんじゃないだろうか。