ディーセント・ワーク

三度の飯より映画が好き。三度の飯を食える人権が好き。

これぞファミリー・ムービー!「アントマン&ワスプ」

風邪が長引いて寝込んでたため、この映画見たのいつだよって感じのレビューですが、めげずにやっていきましょう。(?)

marvel.disney.co.jp
科学をあれこれした特性スーツで自在に大きさを変えられる「身長1.5センチの最強ヒーロー」第2作。
かつて夫・ピムとともにヒーローとして活躍しながらも、ソ連の核ミサイルを停止させるために"量子の世界"へと姿を消したジャネット。そんなジャネットを生還させようと、夫のピム、娘のホープ、そしてアントマンことスコットが奔走する。
しかしその前には、あらゆる物をすり抜けてしまう"ゴースト"を始め様々な敵が現れて…?!

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DC映画の「ダークでシリアス」な路線と対照的に、明るいエンタテイメントを基調としたことで人気と評価を得てきたマーベル映画(以下MCU)。とはいえシリーズが長期化するに伴ってストーリーが深刻化していくのは避けがたく、ヘビーな展開が多くなりがちな中で原点回帰したともいえるのが本シリーズだ。
全観客が呆然となった「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」とほぼ同じ時間軸の話でありながら、作品のタッチは軽妙で、世界観はあくまでも地味で地道。アベンジャーズたちが世界を救うために大暴れしていた最中、スコットはFBIの監視を受けながら自宅で日常を送り、一緒に外出できる日を夢見ながら娘と遊び、娘を喜ばせようとマジックの練習に励んでいた。
こういうミニマムな世界観は戦いが始まってからも変わらない。スコットが絶対教えちゃいけない場所を友達に教えてしまうくだりがあるのだけど、それも前科者である友達の社会復帰を心配してのこと。とかく規模と破壊力がエスカレートしがちなヒーローものというジャンルにあって、フツーの経済活動や家族関係を徹底的に尊重しているのが「アントマン」の良さだと思う。

全体としては、いくらなんでも敵が多すぎ&場所が分かれ過ぎでクライマックスが散漫とか、能力の使い道が巨大化方向に走っていてアントマン特有のアクションシーンが少ないとか、前作ほどアリと手を携えて戦うシーンが無くてガッカリとかの不満点もあるものの、家族で見るファミリー・ムービーとしては及第点かな。

ファミリームービーと言えば、MCU作品の中でもちょっと特異な、「アントマン」世界の家族観について触れておきたい。
MCUヒーローは父との関係にトラウマを抱えているキャラクターが非常に多く、主人公だけでもアイアンマン、ソー、ブラックパンサー、スターロードが挙げられるし、父の決断やヤラカシが物語の契機となっていることも多い。そして、MCU世界全体のラスボスとして出てきたのは、宇宙最強の虐待パパであるサノスだ。
一方で母親はいずれの作品でも影が薄く、出てこないか、出て来てもほとんど描写されないか、死ぬことでドラマに起伏を持たせる要因でしかない。
そんな中、「アントマン」の主人公は自分自身が父親で、ダメな主人公が良き父親になろうとする話で、ヒロイン家族が抱えているトラウマは母(妻)の喪失。この骨格の時点で他のMCU作品とは家族観が大きく異なっている。

アントマン」一作目で、作品そのものとはちょっと違う部分で注目されたのが、ステップファミリーの描き方だった。
従来フィクションの世界では、主人公の元妻なり恋人に"新しい男"ができる場合、そいつは暴力男だったり嫌味だったり陰で子どもをいじめてたり、要はロクデナシと相場が決まっていた。シングルマザーも例外ではなく、とにかく"男と別れるような女"はロクデナシに捕まる愚かな/あるいは弱い女性として描かれることがあまりにも多い。
しかし、「アントマン」に登場した再婚相手の夫は、主人公と対立関係にはあるものの超ナイスガイで、妻や娘との関係も良好。といって娘が実父のスコットを嫌う訳でもなく、娘は2人のパパを2人ともちゃんと好きなのである。
スコットも、娘との関係を修復したいとは願っても元妻に復縁を迫るようなことは一切ないし、元妻もスコットがヒーローであることを知って揺れ動いたりはしない。二人の関係は完全に終わっていて、でも、父であり母であり続けることは可能なのだ。
これは少なくともビックバジェットの娯楽大作の中においては、かなり画期的でオトナな家族像だった。

続編となる本作でもその良さは変わらない。ややネタバレになるかも知れないけど、あれほど「人間」として描かれた母親は、恐らくMCU史上では初だと思う。ワスプのスーツを作ったのがピムではなく彼女自身という設定も非常に良い。
ちなみに今回はヴィランも女性。作品の規模がいろいろなので簡単には比較できないけど、MCUの中では女性比率もかなり高い作品だと思う。
そういう意味でも、お子さんに気兼ねなく見せられるファミリームービーだと言えるだろう。

MCU作品の中で断トツ面白いか?と言われると口ごもる部分はあるけど(笑)、ちっちゃい世界のちっちゃい関係を大切にするこのシリーズが、私はやっぱり愛しくて仕方ない。