ディーセント・ワーク

三度の飯より映画が好き。三度の飯を食える人権が好き。

運命の相手は自分で選べ! 「ヴェノム」感想(ややネタバレ)

www.venom-movie.jp

<あらすじ>
TV局で活躍する熱血記者エディ(トム・ハーディ)は、大企業「ライフ財団」が極秘裏にホームレスを人体実験に使用していると知り、取材を試みる。しかし強引な手法が災いして職も恋人も失ってしまう。
やさぐれた生活を送るエディの元に、「ライフ財団」の研究者が内部告発に訪れる。彼女の手引きで研究室への侵入に成功したものの、研究対象である地球外生命体・シンビオートに接触してしまい、ヴェノムと名乗るシンビオートに寄生されてしまうエディ。
明らかな身体能力の変化、始終聞こえるヴェノムの声に戸惑うエディだったが、次第に"ふたり"の間には信頼関係が生まれていき‥‥。


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予告や宣伝から受けるダークな印象とはかなり違い、特に中盤以降はギャグ満載のコメディと言ってよいくらい明るい映画だった。
ストーリーも設定もかなりゆるく、もっと言えば雑なところもたくさんあり、いわゆる「よくできた映画」でないことは明らか‥‥なんだけど、多くの観客が魅了されているように、とにかくヴェノムとエディの組み合わせがあまりにもキュート。映画としての出来はよくないのに愛しい作品になった「ザ・プレデター」と似た魅力だと思う。
私はそもそも人間以外のイケメンキャラクターにすごく弱いので、個人的にはがっしりハート鷲掴みされる結果になった。そりゃTumblrでヴェノム&エディが一番件数の多いカップルになりますよ、これは。

主人公エディは、暴走しちゃう面もありつつ、弱きを助け強きをくじく正義感を持つ男。彼はサンフランシスコの街に生きる貧しい黒人労働者や、ホームレスの女性、中国系移民の商店主と仲良くしていて、この辺の描写だけでも結構好きだった。
人間同士の恋愛パートは「アントマン」シリーズに近い大人さがあって、エディの元カノであるアンの今カレはすごく優秀で親切だし、アンはエディへの恋愛感情が失せても最低限の人間的な愛情は持ってるし、といって恋愛関係が復活したりはしない。
そして何といっても、寄生生物ヴェノムとの丁丁発止なやり取りがとにかく楽しい。エディは決してひ弱なタイプではないのに、ヴェノムの強引さは比較にならず(なにせ勝手に寄生しちゃうくらいだし)、トム・ハーディが巨大な粘菌みたいな生物に振り回される様はどうしたってほんわかした気持ちにさせられてしまう。いわゆる見せ場のアクションシーン以外がとても魅力的な作品だと思う。

面白いのは、強制的に寄生させようと人間がシンビオートに与えた宿主(ホームレスたち)にはうまく寄生できず殺してしまうのに、シンビオートが脱走して自主的に寄生した場合は非常にスムーズに寄生できる点。
作中で理由は全く説明されないので、原作にある設定なのか、深く考えず作ったら偶然そういう展開になったのかわからないけど、結果として寄生する側の意思によって成否が変わる描き方になっている。
生きた動物を食べないと飢えて宿主の内臓を食べ始めてしまう弱点も、脱走している個体はうまいこと生きたウナギやロブスターや人間を摂取して乗り越え、実験室で人間の食べ物(ヴェノムいわく"死体")しか与えられない個体は宿主を死なせてしまう。この辺も、どこまで意図的か分からないけど生体実験の描き方として印象的だった。
この映画はやはりエディとヴェノムのロマコメで、自分の生き方もパートナーも、しっかり自分で決めなきゃ死んじゃうぞ!というお話かも知れない。

違う星(くに)に産まれたのに結ばれちゃったミラクルロマンスカップルのヴェノムとエディ、次回作は是非ふたりのほんわか日常シーンに1時間くらい割いてもらいたいし、それが無理ならふたりのほんわか日常エピソードの薄い本が1億冊くらい読みたいと思う今日この頃だ。