ディーセント・ワーク

三度の飯より映画が好き。三度の飯を食える人権が好き。

動物映画の抱える倫理問題と「ファンタスティック・ビースト」の魔法動物たち(前半)

私はたいそうな動物好きでして。
地元の動物愛護団体に細々とながら協力してるし、個人で活動してる猫ボランティアさんにも細々とながら協力してるし、なにせ私自身、家で保護猫を9匹も飼っている。その上、最近はベジタリアンでもある。

なんて話をすると、「あ、じゃあ、この前のネコ映画見た? 〇〇が出てるやつ。ちょ~かわいいよね~♡ 癒される~♡」なんて言われたりする。
その度に、あ―いや…私、ソッチの動物好きじゃないんすよね…。と申し訳ないような肩身が狭いような気持ちになって、へへ…と愛想笑いするので精一杯。

だってさ~!!!!
映画の撮影でどれだけの動物が犠牲になって来たと思うんすか。

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ここに紹介されているのなんてほんのほんのほんの一部。いかに物語が動物愛に溢れる素晴らしいものであっても、実際の動物を撮影に使うのは常にこういうリスクを伴う訳です。しかも人間じゃなくて動物にリスクが伴う訳です。それを人間の都合で動物に押し付けてる訳です。
アメリカでは動物を撮影に使う際のルールが徐々に厳しくなってきているし、最近ではインド映画「ダンガル きっと、つよくなる」にも撮影中に動物を傷つけていないというテロップが入っていたりするくらい。それも、動物を出演させる限りこうしたリスクは常に付きまとうことになる。


一方、技術的進化によって動物映画の撮影現場が変わりつつあるのも事実。1995年に制作された「ベイブ」は当時最新のCGとアニマトロニクスなどの特殊効果を多用し、動物たちの姿を感情豊かに描いてみせた。
ちにみに、「ベイブ」一作目で実質的な主演を務めた農夫役のジェームズ・クロムウェルは、食肉になる運命から逃れようとする本作の物語に強い影響を受けている。出演をきっかけにヴィーガン(食事を始め動物利用を行わないライフスタイルを送る人)になり、動物利用に反対する活動家としても熱心。2013年にはウェンディーズの前で抗議活動を行って逮捕されているほどだ。

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映像技術は日進月歩で進み、エモーションキャプチャを利用したリブート版「猿の惑星」シリーズ(2011~2017年にかけて公開)や、「少年以外、全部CG!」のキャッチコピーでおなじみ「ジャングルブック」実写版(2016年)など、生体を一切利用しない高クオリティの作品も増えてきている。
ただ、特殊効果のみで動物出演を補うにはそれなりの予算が必要なので、技術の進歩だけで問題が解決することは考えにくいだろう。


生体利用の問題がすべてクリアされても、動物映画にはもうひとつ大きな問題がある。それは「動物ちゃん可愛すぎ!」問題だ。
今年、東京にアライグマが現れ、大捕り物の末に捕獲されて殺処分されたことをご記憶の方も多いと思う。日本に存在しなかったアライグマが都会で捕まるまでに至った発端には、1977年に放送されたアニメ「あらいぐまラスカル」の影響が大きいという。アニメ人気にあやかってペットとしての需要が生まれ、輸入されるようになったのだ。
そもそも「あらいぐまラスカル」は、乳飲み子のラスカルをひろった主人公が手塩にかけて育て、最終的に野生動物は野生に返すべきと考えて自然に戻す物語。それでもこうした問題は起きてしまう。

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もちろんこれは映画やフィクションに限らない問題ではあるけど、映画でも「ファインディング・ニモ」の影響でカクレクマノミの需要が急激に高まり、乱獲にまで至ったなどの過去がある。
ディズニーは続編となる「ファインディング・ドリー」の作中で海の魚は海へ返すべきとしつこいほどアナウンスしているが、それでもナンヨウハギのペット需要は高まり、「ドリーのようなナンヨウハギはペット向きではありません」とわざわざディズニー側がコメントを出している。


というわけで、ウルサイ観客である私は動物を愛すればこそ動物映画(動物が出演する映画)を楽しめないことが多い。あまりにも、多い。
繰り返しになるけど、いかに動物愛溢れる素晴らしい物語であっても、映画の内容や制作側の意図に関わらず、動物映画には必ず生体利用の問題とブームの問題がついて回るからだ。
では、私と同じかそれ以上に動物を愛し、「三度の飯より動物が好き」でおなじみニュート・スキャマンダー先生の映画はどうなのか。(そんなキャッチコピーはない)
長くなったので、「ファンタスティック・ビースト」については後半で書くことにしよう。